「矯正を始めたいけど、マウスピースとワイヤー、どちらを選べばいいの?」
【著者】木村 絵美子(きむら えみこ)
花矯正歯科 大井町 院長・歯学博士 | 日本矯正歯科学会認定医 / 口腔外科学会認定医

矯正を検討している方から最もよく聞かれる質問のひとつです。どちらも歯並びを整える治療ですが、装置の仕組みも、向いているケースも異なります。この記事では、両者の違いをわかりやすく比べながら、選び方のポイントをご説明します。
目次
そもそも何が違うの?
マウスピース型矯正装置は、マウスピースを装着して歯を動かす方法です。段階的に形の異なるマウスピースに交換しながら、少しずつ歯並びを整えていきます。
ワイヤー矯正(マルチブラケット矯正装置)は、歯の表面にブラケットという装置を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かす方法です。矯正治療の中でも長い歴史を持ち、対応できる症例の幅が広いのが特徴です。
比較表:一目でわかる違い
| マウスピース矯正 | ワイヤー矯正(表側) | |
|---|---|---|
| 見た目 | ほぼ透明で目立たない | セラミック製なら比較的目立ちにくい |
| 取り外し | できる(食事・歯磨き時) | できない |
| 痛み | 比較的少ないと言われている | 調整後に数日痛みが出やすい |
| 対応症例 | 軽〜中程度の症例が中心 | 軽症〜重症まで幅広く対応 |
| 歯磨きのしやすさ | 取り外せるので通常通り | 装置の周りを丁寧に磨く必要あり |
| 治療期間 | 症例による(1〜2年程度) | 症例による(1.5〜3年程度) |
| 自己管理 | 1日20〜22時間の装着が必要 | 装置を取り外す必要がない |
マウスピース矯正について詳しく
治療の流れ
まず口腔内を3Dスキャナーで精密に読み取り、コンピュータ上で治療計画を立てます。完成した歯並びまでの動きをシミュレーションし、その段階ごとに対応したマウスピースを一括製作します。患者さんは1〜2週間ごとに次のマウスピースへ自分で交換しながら治療を進めます。
当院ではiTeloという3Dスキャナーを使用しており、従来の印象材(粘土状の型取り材)を使わずに口腔内を正確にデジタル化できます。型取り時の不快感が少なく、より精密なマウスピース製作が可能です。
向いている方
- 装置の見た目や装着感が心配
- 食事や歯磨きをいつも通りにしたい
- 比較的軽〜中程度の歯並びの乱れ
- 22時間以上の装着時間を守ることができる。
メリットと注意点
最大のメリットは見た目の自然さと取り外しができることです。食事のたびに外せるため口腔ケアがしやすく、矯正中の虫歯リスクを抑えやすいのが特徴です。
一方で注意が必要な点もあります。1日22時間の装着が治療効果の前提です。「外せる」からこそ、装着し続ける自己管理が結果を左右します。また、飲み物はマウスピースを装着したまま水のみOKで、色のついた飲み物(コーヒー・お茶など)や熱い飲み物はマウスピースを外してから飲む必要があります。
対応できる症例の範囲
技術の進歩により対応できる症例は年々広がっています。症例によっては、ワイヤー矯正よりもマウスピース矯正の方が治療期間が短く終わることもあります。特に軽度〜中程度のガタガタや開咬(前歯が噛んでいない)などは、マウスピース矯正が得意と言われているケースです。
一方で、歯が計画通りに動きにくい場合は、途中からワイヤー矯正へ切り替えることがあります。そのため、マウスピース矯正を希望する場合でも、ワイヤー矯正も取り扱っている矯正歯科で治療を受けることが重要です。ワイヤー矯正を行っていないクリニックでは、切り替えが必要になった際に対応できず、転院が必要になるケースもあります。
当院では表側・裏側・マウスピースすべての装置を取り扱っているため、治療の途中で方針を変更する必要が生じた場合も、同じ担当医のもとで継続して対応できます。
ブラケット矯正(ワイヤー矯正)について詳しく
治療の仕組み
歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな装置を専用の接着剤で取り付け、そこにワイヤーを通します。ワイヤーの弾性を利用して歯に持続的な力をかけることで、少しずつ歯を動かしていきます。定期的に来院し、ワイヤーを調整(交換・締め直し)することで治療が進みます。
通院頻度は月に1回程度が一般的です。
向いている方
- 重度の歯並びの乱れや骨格的な問題がある
- 抜歯を伴う複雑な歯の移動が必要なケース
- 装置の管理(付け外し)が煩わしいと感じる方
ブラケットの種類
ブラケットには主に2種類あります。
金属製ブラケットでは、すべてのパーツが金属で作られているます。やや目立ちますが、矯正装置の費用が抑えられます。特に見た目は気にならない、矯正している!とむしろ知られたいという方が希望されます。
審美ブラケット(セラミック製)は歯の色に近い白・透明色のため、金属製より見た目が自然です。当院ではこちらを使用しています。強度も十分で、金属アレルギーの心配もありません。
金属製でもセラミック製でも機能は変わらず、あくまで見た目の違いとなります。
メリットと注意点
ブラケット矯正は対応できる症例の幅が広いのが最大の強みです。抜歯を伴う大きな移動や、噛み合わせの根本的な改善が必要なケースでも対応できます。
装置は外せないため、食べかすが溜まりやすい部分が増えます。歯ブラシのほかにタフトブラシや歯間ブラシを使った丁寧なケアが必要です。当院では矯正開始時にブラッシング指導を行いますので、慣れれば特別難しくはありません。
ワイヤーを調整した直後は数日間、歯がうずくような痛みが出ることがあります。通常は数日で治まりますが、個人差があります。
「裏側矯正」「ハーフリンガル」という選択肢も
ワイヤー矯正の一種で、装置を歯の裏側に取り付けるのが裏側矯正(リンガル矯正)です。表からは装置がまったく見えないため、見た目を気にしながらも治療の適応範囲を広げたい方に向いています。
上の歯だけ裏側装置、下は表側装置を使うハーフリンガルも、費用と審美性のバランスを取りやすい方法として選ばれています。
結局、どっちがいいの?
「マウスピースとワイヤー、どちらが優れているか」という問いに対する答えは、症例や患者さんのライフスタイルによって異なるというのが正直なところです。
軽〜中程度の歯並びで、目立ちにくさと取り外しやすさを重視するならマウスピース矯正が有力な選択肢になります。一方、複雑な症例や抜歯が必要なケースでは、ワイヤー矯正の方が適している場合があります。
大切なのは、自分の歯並びの状態に合った方法を選ぶことです。「マウスピースにしたい」という希望があっても、診断の結果ワイヤー矯正の方が適切なケースもありますし、その逆もあります。まずは専門医に相談し、自分の口腔内の状態をきちんと確認することをおすすめします。
当院での診断・カウンセリングについて
花矯正歯科 大井町では、歯科用CTと3DスキャナーiTeroを用いた精密な検査を行っています。データをもとに、患者さんの歯並びの状態と生活スタイルを踏まえながら、最適な治療方法をご提案します。
「マウスピースとワイヤー、自分にはどちらが合っているか知りたい」というご相談だけでも、ぜひお気軽にお越しください。
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