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子どもの矯正、どこで受けるべき?

【著者】木村 絵美子(きむら えみこ)

花矯正歯科 大井町 院長・歯学博士 | 日本矯正歯科学会認定医 / 口腔外科学会認定医

「他の歯科医院では全く違うことを言われたんですが…」

初診相談でこのようなお言葉をいただくことが、実は少なくありません。小児矯正は、担当する歯科医師によって治療方針が大きく異なることがあります。それは、矯正歯科医かどうか、大学の研修課程で小児矯正を経験してきたか等、バックグラウンドの違いや小児矯正治療やその後の成人矯正治療をどうとらえているかによるものだと私は考えています。

今回は、近年広まっているトレーナー型装置(T4Kやマイオブレースなど)のみによる小児矯正治療について、矯正認定医の立場から率直にお伝えしたいと思います。

小児矯正は、大人の矯正より難しい

まずお伝えしたいのが、小児矯正は大人の矯正以上に難しいということです。

大人の矯正治療は、成長が終わった後の「固定された状態」に対して治療を行います。難しさはありますが、少なくとも成長という不確定要素がありません。一方、小児矯正では以下のような難しさが重なります。

1.成長の予測が難しい:顎骨の成長量・成長方向は個人差が大きく、現時点の科学では完全な予測は不可能です。 

  (日本矯正歯科学会 成長期の骨格性下顎前突ガイドライン, 2020

2.診断の複雑さ:骨格性・歯性・機能性の問題が複合していることが多く、精密な診断には専門的知識・経験と

  診断・分析能力が必要

3.協力度の問題:治療の成否は、お子さん本人と保護者の方の協力度に大きく左右される。これが治療の予測実現

  性を低下させる

だからこそ、小児矯正は「矯正認定医」が担当することが重要だと私は考えています。大学の研修機関で小児矯正を経験し、その後も最新のエビデンスをもとに学び続けてきたかどうかが、治療方針の差となって現れます。

トレーナー型装置とは何か

T4Kやマイオブレースをはじめとするトレーナー型装置は、口腔周囲筋の機能訓練と歯列誘導を目的とした既製品の取り外し式装置です。「ブラケットを使わずに歯並びを治す」という点が、親御さんにとって魅力的に映ることも理解できます。

これらの装置は、口腔習癖(口呼吸・舌突出など)の改善や、筋機能訓練の補助として一定の役割を果たします。

トレーナー型装置だけでは対応できない問題がある

小児矯正でよく遭遇する問題の中に、トレーナー型装置では対処できないものが複数あります。

① 6歳臼歯(第一大臼歯)の異所萌出

6歳ごろに生えてくる第一大臼歯(6歳臼歯)が、正常な経路からずれて萌出する「異所萌出」は、発生頻度が2〜6%とされ(Lombardo et al., 2021, PMC9689926)、放置すると乳歯の早期脱落・スペースの喪失・後続歯への影響につながります。

PubMedを対象としたレビューでは、この問題には早期診断と適切な矯正的介入が必要であり、放置により不可逆的な状態になり得ることが示されています(Baccetti et al., 2022, PubMed35722842)。また、介入のタイミングとして3〜6ヶ月の経過観察期間の後、不可逆的と判断された場合は治療が必須であるとされています(Lombardo et al., 2021)。

トレーナー型装置には、この問題に対処する機能はありません。パノラマX線写真による定期的な診査と、矯正歯科医による診断・治療が不可欠です。

② 上顎犬歯の埋伏(萌出不全)

上顎の犬歯(糸切り歯)は、第三大臼歯(親知らず)に次いで埋伏頻度が高い歯です。一般的な萌出時期は10.5〜11.5歳とされており(Kajiyama et al., 2021, PubMed34462251)、早期発見・早期介入が治療の成否を大きく左右します。

9〜10歳ごろに犬歯部を触診して膨隆を確認できない場合、埋伏の可能性を疑う必要があります(PMC12468034)。また、パノラマX線写真では8歳ごろから埋伏リスクの予測が可能とされています(PubMed22748989)。

早期発見・適切な介入によって埋伏犬歯を正常に萌出させることが可能であり、診断と介入のタイミングが決定的に重要であることが示されています(Bedoya & Park, 2009, PubMed19955066)。

この問題への介入には、乳犬歯の早期抜去・上顎拡大・外科的開窓と矯正的牽引など、専門的な判断と技術が必要です。トレーナー型装置では対応できません。

③ 骨格的な問題

受け口など、骨格に起因する問題は、成長期に適切な装置で顎骨に直接働きかける治療が有効な場合があります。日本矯正歯科学会の「成長期の骨格性下顎前突 診療ガイドライン(2020年)」でも、成長期における骨格的介入の選択肢が示されています。

これらの骨格的問題は、既製品のトレーナー型装置の適応範囲を超えているケースがほとんどです。適切な時期に矯正医が診断・介入しなかった結果、成人矯正の難易度が上がる、あるいは外科的矯正が必要になるケースが生じます。

但し、日本矯正歯科学会が作成した診療ガイドラインでは、上顎前突の治療は推奨されていません。理由としては、矯正歯科の分野はデータを得るための条件の統一等が難しく、現時点では十分な根拠がないのです。

しかし、矯正歯科医は日常の臨床で上顎前突の治療が有効であるケースがあることを経験しています。これは、診断・分析により、顔のタイプを分析して判断しています。

骨格的な問題があった場合、顎の位置そのものを改善するうえで、オーダーメイドの下顎成長促進装置(ツインブロック)はトレーナーよりも明確に優れた効果を示しています。10)11)

「1期治療は行わず、2期治療から始める」という考え方もある

ここで大切なことをひとつ補足します。矯正医の中には、「1期治療は行わず、永久歯が生え揃う2期治療から始める」という方針をとる先生もいらっしゃいます。これは決して無責任な判断ではありません。

その理由として、以下のような合理的な根拠が挙げられます。

  • 患者負担の軽減:1期・2期と2回の治療期間を経るより、2期治療のみで完結する方が、お子さんと保護者の方の時間的・経済的・精神的な負担が少ない場合がある
  • 治療の効率:症例によっては、1期治療を行っても最終的な歯並びの結果が2期治療単独と大きく変わらないことがある。研究でも1期治療の長期的効果については議論が続いている(Papageorgiou et al., 2023, PMC10959601)
  • 協力度の問題:幼い時期からの長期治療はお子さんの協力度を維持することが難しく、結果として治療効果が得られにくい場合もある

こうした考え方は、矯正歯科の専門的な知識と経験に基づいた、ひとつの合理的な判断です。重要なのは「1期治療をするかしないか」という選択肢そのものより、その判断が精密な診断に基づいているかどうかです。

私自身は、受け口・交叉咬合・6歳臼歯の異所萌出・上顎犬歯埋伏リスクなど、早期介入の根拠が明確な症例では1期治療を選択します。一方、単純な叢生や軽度の出っ歯など、2期治療で十分対応できると判断した症例では、経過観察を選ぶこともあります。大切なのは「この子に今、何が必要か」を個別に判断することです。

矯正認定医として、お伝えしたいこと

「トレーナー型装置をすすめられたんですが、どう思いますか?」と聞かれることがあります。私はいつも正直にお答えしています。

トレーナー型装置が口腔習癖の改善や筋機能訓練の補助として一定の役割を担い得ることは否定しません。しかし、小児矯正の治療としてこれだけで完結できる症例は限られています。特に、6歳臼歯の異所萌出・上顎犬歯の埋伏リスク・骨格的な問題が存在する場合には、専門的な診断と介入が必要です。

「適切な時期に矯正歯科医が介入できなかったことで、大人の矯正治療の難易度が上がる」――これは私が何度も経験してきた現実です。子どもの時期の歯科的な問題は、放置すれば自然に解決するものもありますが、適切なタイミングでの介入なしには解決できない問題も確実に存在します。

何より大切なのは、お子さんの口腔の状態を正確に把握した上で、「今、何が必要か」を判断することです。そのためには、セファロX線写真を含む精密な検査と、矯正医による診断が出発点になります。

まとめ

  • 小児矯正は、成長の予測困難さ・複雑な診断・協力度の問題から、大人の矯正以上に難しい治療
  • 「1期治療は行わず2期治療から」という方針も、精密な診断に基づいた合理的な選択肢のひとつ
  • トレーナー型装置は習癖改善の補助として一定の役割はあるが、小児矯正全体を担える装置ではない
  • 6歳臼歯の異所萌出・上顎犬歯の埋伏・骨格的問題には、矯正医による早期診断と専門的介入が必要
  • 日本矯正歯科学会認定医・専門医による診断を受けることが、安心な小児矯正の第一歩

*大変申し訳ございませんが、現在予約が大変混み合っているため、小児の新規患者様のご予約をお受けしておりません。そのため、少しでも良い先生との出会いにつながればと思い、この記事を書かせていただきました。
お近くの日本矯正歯科学会認定医の先生へご相談いただければ幸いです。

新規の患者様の受け入れを再開する際には、ホームページまたはインスタグラムにてお知らせさせて頂きます。

ご予約はこちら→ https://plus.dentamap.jp/apl/netuser/?id=6511

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【著者プロフィール】

木村 絵美子(きむら えみこ)

花矯正歯科 大井町 院長・歯学博士 / 日本矯正歯科学会認定医 / 口腔外科学会認定医

東京歯科大学大学院修了(歯学博士)。大学病院にて口腔外科・矯正歯科を専門的に研鑽後、東京歯科大学歯科矯正学講座 臨床講師を経て、2023年に花矯正歯科 大井町を開院。日本矯正歯科学会認定医・口腔外科学会認定医の両資格を持ち、口腔外科で培った広い視野を矯正治療に活かしている。「ただ歯並びを治すだけでなく、顔面・全身を考慮した長期的に安定する治療」を理念とする。自身も2児の母として子育てに向き合う中で、患者さんが安心して通える空間づくりを大切にしている。

所属:日本矯正歯科学会 / 口腔外科学会 / 日本舌側矯正歯科学会 / アメリカ矯正歯科学会(AAO)ほか

【参考文献】

1. 公益社団法人 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療の診療ガイドライン 成長期の骨格性下顎前突編」2020年. https://www.jos.gr.jp/asset/guideline_mandibular_protrusion_growth.pdf

2. Al-Moraissi EA, et al. Myobrace versus twin block in the treatment of class II malocclusion in children: A systematic review. PMC. 2024. PMC11096594

3. Baccetti T, et al. Treatment of ectopic eruption of the maxillary first permanent molar in children and adolescents: A scoping review. PubMed. 2022. PubMed35722842

4. Lombardo G, et al. Ectopic Eruption of First Permanent Molars in Children. PMC. 2021. PMC9689926

5. Kajiyama K, et al. Radiographic predictors of maxillary canine impaction: A systematic review and meta-analysis. PubMed. 2021. PubMed34462251

6. Bedoya MM & Park JH. A review of the diagnosis and management of impacted maxillary canines. J Am Dent Assoc. 2009. PubMed19955066

7. Treatment Options in Impacted Maxillary Canines: A Literature Review. PMC. 2025. PMC12468034

8. Papageorgiou SN, et al. Optimal Treatment Timing in Orthodontics: A Scoping Review. PMC. 2023. PMC10959601

9. 公益社団法人 日本矯正歯科学会「認定医制度規則」令和7年2月施行. https://www.jos.gr.jp/asset/recognition_rule.pdf

10. Elfeky HF, Hammouda N, Fayed MMS:Myofunctional Trainer versus Twin Block in Developing Class II Division I Malocclusion: A Randomized Comparative Clinical Trial. Dent J, 8:44, 2020.

11. Kızıltaş Araç M, Güler Dönmez B:Dentoalveolar, skeletal, pharyngeal airway, cervical posture, hyoid bone position, and soft palate changes with Myobrace and Twin-block: a retrospective study. BMC Oral Health, 23:63, 2023.