MSE(Maxillary Skeletal Expander)とは?従来の拡大装置との違いを解説

歯並びや噛み合わせを治療するために、上顎を広げる治療が必要になるケースがあります。特に成人の場合、小児期のような骨の拡大が難しく、従来の拡大装置では効果が十分に得られないこともありました。そうした中、近年注目されているのが MSE(Maxillary Skeletal Expander) という装置です。
MSEとは?
MSEとは、上顎の骨そのものを拡大するための矯正用装置で、アンカースクリュー(小さなピン) を骨に直接埋入して固定するのが大きな特徴です。
従来の拡大装置が歯に力を加えて間接的に骨を広げるのに対し、MSEはアンカースクリューを骨に固定し骨に直接矯正力を作用するため、成人でも高い拡大効果が期待できます。
MSEはどんな症例に向いている?
以下のような症例に対してMSEは非常に有効です。
- 上顎の横幅が狭い(狭窄)
- 反対咬合
- 鼻づまりやいびきなどの呼吸の問題がある
MSEのメリット
- 成人でも外科手術を伴わず骨格の拡大が可能
- 気道や鼻腔の広がりによる呼吸機能の改善が期待できる
- 歯に負担をかけず、骨に直接作用するため安定しやすい
- 短期間で大きな効果が得られる可能性がある
- 抜歯をせずに矯正治療が行える可能性がある
注意点とリスク
- 一時的に違和感や痛みを伴うことがある
- 装置による発音への影響
- 前歯の間に隙間ができる
- 骨が固いケースでは、十分に奏功しない可能性がある
当院での対応
当院では、セファロX線写真やCBCT、3Dスキャンによる精密検査を行い、適応の可否を検討しています。
MSEの治療の流れ
- 相談
- 精密検査(CBCTや口腔内スキャンで骨の状態を確認)
- 検査結果の説明
- 装置の装着・アンカースクリューの植立
- 1〜2週間かけて拡大
- 拡大完了後、数ヶ月間の保定
- 矯正装置の装着
実際の症例



初診時には下顎よりも狭かった歯のアーチが、MSEによる拡大により改善しています(赤丸部)。一時的に前歯に隙間が開くことがありますが、拡大後に隙間の部分を目立たないように修復しています。
*口腔内写真掲載にあたり、患者様の了承を頂いております。
まとめ
MSEは、成人の上顎の骨格的な拡大を効果的かつ効率的にに行うことができる装置です。従来の装置で出来なかった事ができるとても画期的な装置です。しかし、適応は慎重に選択されるべきであり、日本矯正歯科学会認定医での治療をお勧めします。特に骨格的な問題がある患者様に適応するため、外科矯正治療についても提案・比較してくれる矯正歯科がいいでしょう。
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